犬と猫の”糖質過剰症候群”と”糖質制限”について

雑食動物、完全肉食動物と定義されています。”数百万年”前に誕生した彼らの主食は、狩猟による肉食であったことは、歯の形状腸の解剖学的な観点などからも否定の余地がありません。

犬と猫の本来の獲物の栄養組成は、水分/蛋白質/脂肪を主体として構成され、それらにビタミン/ミネラルを加えて、極少の糖質(1%程度)で成り立っています。
つまり、犬と猫の消化システムは、数百万年前から肉食(肉だけ食べているという意味ではない、獲物の脂肪や内臓、血液、骨髄、未消化物も食べていることに注意)を基準として進化してきたのです。

さて、わずか約”100年”前にイギリスで誕生したドライフードの組成を御存じでしょうか?
大量生産/安定価格/長期保存などを可能にするために、穀物、つまり糖質(40~50%程度)を主体に作られて、水分10%以下に抑えています。※特に完全肉食動物と定義された猫に、糖質たっぷりのドライフードを多給することは、ロジックが破綻し矛盾していると思うのは私だけでしょうか!?そして、猫の泌尿器疾患(結晶/結石/血尿)膵炎糖尿病などの慢性疾患は、まさに糖質過剰な食事をする人間(過去の私自身)が生活習慣病に至るメカニズムと全く同様だと考えられます。

犬と猫の現代の”糖質過剰”の食生活は、数百万年の進化の過程で獲得した肉食に特化した消化システムにとって、非常に負担がかかる食事内容となっていることが理解出来ます。臓器への中長期的な負担は、慢性炎症となり様々な疾患(糖質過剰症候群)へと移行します。体は、水/蛋白質/脂質とビタミン/ミネラルを主体に構成されています。
一方、糖質エネルギー源となりますが、体の構成成分にはなりません。使用されなかった余剰分の糖質は、皮下脂肪や内臓脂肪となり、様々な問題(糖質過剰症候群)を誘起します。※特に果糖は、脂肪製造機とも呼ばれています。

肥満生活習慣病に罹患し迷走していた私は、江部康二先生の著書に出会い、2010年から自分自身に対して、批判的な視点から糖質制限を開始しました。最初は懐疑的でしたが、直ぐに体調の顕著な改善が認められ、肥満も解消(95Kg → 69Kg/身長175cm)され、検査データも参考値範囲内に良化したことをもって、慢性疾患に罹患した自分の最愛の犬と猫たちにも食生活の変更をスタートさせました。
そして彼らの日常の健康状態や検査データからも犬と猫への糖質制限も非常に有用であると実感しました。(※n数が少なすぎるので、飼主様は自己責任にて実施して頂く必要がございます)

私は宇都宮と言う田舎の無名の臨床医であり研究者ではありませんので論文を書いたり、学会で発表することもありません。またSNSもしておりませんので、犬と猫の糖質制限の有用性が多くの方に認知されることは無いかもしれません。この文章でさえ、数少ない方の目に留まる程度だと思います。

2022年現在で臨床獣医療26年目になる浅学の私は、糖質過剰症候群は、過去に起きた耐震偽造問題そのものだと思いました。その問題で判明したのは、見た目は同じ建物でも、太い鉄筋と適切なコンクリートで作られた建物と、細い鉄筋と水を多めにした通称シャブコンで作られた建物は、全く異なる経緯を辿るという事です。後者は、見た目は立派でも、顕在化することなく水面下で、徐々に建物内にヒビが入り、時に傾斜し、鉄筋は錆びつき、構造体が脆弱になり、突然の地震の際に甚大な被害をもたらします。まるで人間の慢性疾患が気付かぬうちに徐々に進行し、あたかも突然発症するのと同じように。「体は食べた物で出来ている(食生活の重要性)」、「体には100人の医者がいる(自分自身の治癒力/回復力)」という先人たちの言葉に耳を傾けて頂き、
人間と同様に犬と猫に対しても食生活食事内容が重要であることに気が付いた飼主様とその犬と猫たち健康のお役に少しでもたてれば獣医師冥利に尽きます。私が獣医師になったことに宿命があるとすれば、細々と犬と猫の糖質制限の有用性を説くことだと考えています。私は押し売り業者ではないので、食生活の重要性に気が付いた人のヒントになればと思います。

また、仔犬と仔猫は、母犬の食べた食事を元に誕生(厳密には父犬の精子と母犬の卵子 → つまり父犬の食生活も重要ということ)します。幼/若齢の犬と猫にアレルギー疾患や嘔吐下痢などの消化器疾患が多いのも、母犬の食生活食事内容)が糖質過剰(特に近年はさらに精製された穀物でドライフードが製造されている)であることが主要因ではないでしょうか!?まさに犬と猫の耐震偽造問題だと思います。適切で強靭な建物と同様に、健康な体を作る食生活をおくるには一見すると費用がかかるようにも思えます。しかし、慢性疾患に罹患して中長期的に動物病院で検査や治療(多くは対症療法であり、根本治療はしていないので病気が繰り返される)に費用をかけるより、”犬と猫の食事にお金をかけたほうが賢明で最良で、結果的に安上がり”だと考えている獣医師は世界中で私だけでしょうか!?※病気は初期/中期/慢性期と3段階に移行します。糖質制限食の有用性は、初期から中期前半に顕著であり、中期後半から慢性期では効果は乏しいかもしれませんが、進行を遅らせる可能性があると思われます。慢性炎症による負の遺産は消えて無くなることはなさそうですが、対症療法に反応しない慢性疾患には援護射撃として試してみる価値はあると思います。

最後に、ドライフード/糖質過剰と糖質制限について説明してきましたが、現代社会においてドライフードを完全に排除することは不可能だとも考えています。もし災害などの時には非常に便利だからです。しかし、犬と猫には”ドライフードだけ/のみ”を与えるという前提/習慣に疑問を持ち、犬と猫の食事内容について思考する段階に至った飼主様は、出来る範囲で糖質らして、動物性蛋白質と脂質に加えてビタミン/ミネラルを増やすことで、犬と猫が進化の過程で獲得した本来の消化システムに近い食事内容にすると良いのではないでしょうか。2022/05/27(満52歳)

 

 

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